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悩んでないで熊野においでよ!NO,18

執筆 : 
shingukk 2009-8-4 15:38
はじめて大雲取を歩いたときは、職場の後輩を誘い二人で歩いた。
熊野川町小口までは、家内に車で送ってもらい、8時頃から歩き始めた。
小口から那智山に抜ける大雲取越えで最初に出迎えてくれたのは、古道沿いの民家の飼い犬であった。静寂な小口の集落に響き渡るような鳴き声で吠えられた。世界遺産に登録され、最近では、古道ウォーカーも増えたせいで通行人にも慣れたのか、あまり吠えなくなったようだ。数軒の民家を過ぎると、うっそうとした森の中に引き込まれるように坂道は続く。まさに黄泉の国に通じるような・・・冷気と湿気、苔むした石、スタート地点からきつい登り坂である。道の傍らには、数十年前まで人が暮らしていたとわかる石垣が続く。
約20分ほど登ったところに、円座石(わろうだいし)がある。わろうだとは、昔の円形をした座布団のことで、この大石の上に刻まれたわろうだに、熊野の神々が座って談笑したと伝わる。その大石には、修行僧により阿弥陀仏・薬師仏・観音仏の梵字が刻まれている。ここまででもかなり体力が消耗していたが、円座石から更に登る。会話はほとんどなくなっていた。歩くのに精一杯。昼間でも薄暗く、なにやら霊気漂う道である。

大雲取・小雲取越えの道端には、いくつかの歌碑が建てられている。
「わが越ゆる大雲取の山中に円に坐す地蔵菩薩はー杉浦勝」息が上がって苦しいときにほっとさせられる。楠の久保旅籠跡の少し手前に、休憩所と水飲み場がある。そこで10分ほど休憩した。二人は水筒に用意していた熱いお茶を飲んだ。ここで、水筒のお茶を飲まずに水道の水を飲んでいたら、あとで少しは救われたのだが・・・

「鯉のぼり大雲取の一軒にー須川峡生」
楠の久保旅籠跡を過ぎると、更に急な登り坂だ。ここから「胴切坂」と呼ばれる心臓破りの坂が続く。この坂を小口方面から登ってくると、このあたりで足の疲れもピークを向かえるが、皮肉にも
「風のゆく梢の音か瀬の音か、下りの道は心たのしもー土屋文明」の歌碑がある。那智大社方面からを想定して建てたのであろう。
小口を出て、最初の峠が標高870メートルの越前峠だ。道は最短距離を一気に登る。これでもか、これでもかと登る。その当時は、熊野古道の地図もなく、どれ位進んだのか、あとどれ位あるのか、何もわからない状態であった。一応、事前に要所・要所の目安や峠などは確かめておいたが、あてにならない。現在は、500mごとの道標が建てられている。

「瑠璃鳴くや雲取山のいきいきとー池本皎月」10時半頃、ようやく越前峠に到達した。
「輿の中、海の如しと嘆きたり、石を踏む丁(よぼろ)のことは伝えず」土屋文明の歌碑がある。1,201年後鳥羽上皇の熊野御幸に随行した藤原定家が、輿の中海の如く・・・と書きとめている。それを皮肉った歌である。私なんぞ自分ひとりで登るのもひぃ〜ひぃ〜言っているのに、乗り心地が悪いと嘆くとは・・・と言ったところである。
少し休憩して先を急いだ。

「虎杖(いたどり)のおどろが下をゆく水のたぎつ早瀬をむすびてのみつー長塚節」

「紀伊のくに大雲取の峰ごえに一足ごとにわが汗はおつー斉藤茂吉」
途中、石倉峠を越え、11時半頃、中間地点の地蔵茶屋跡に着いた。地蔵茶屋跡の傍の谷川で顔と手を洗って、昼食をとることにした。まるでピクニックのようだが、このとき、二人ともかなり疲労困憊していた。その証拠に、地蔵茶屋跡から2kmほど歩いた場所で、私より十歳も若い後輩が足を攣ってしまった。その後輩は、普段から野球をやっていて体力にはかなり自信があったようで、私には少なくとも負けないと思っていたようである。幸いにも後輩は、私のマッサージと少しの休憩で回復した。このころには、水筒のお茶はすでに少なくなっていた。水飲み場があれば、持ってきた飲料に手をつけず、水飲み場の水を飲むべきである。持ってきた飲料は、少しでも緊急用に備え残すことを教訓とする。それと、瞬間冷却剤なども常備すること。
疲労もある時点を過ぎると、惰性に変わる。いつの間にか、風が心地よく感じるようになっていた。山並みの美しさ、鳥の鳴き声、名も知らぬ野の花・・・何か記憶喪失になっていたのが、急に記憶が戻ったような感覚で、あぁ・・・気持ちいい・・・あらゆるものが心地よく身体に入ってくる。それらは急に現れたわけではない。今まで気がつかなかっただけである。
舟見峠では、はるか眼下に広がる太平洋に向かって
「おれは生きてるぞ〜!」とこんなに自然界のあらゆる力のお陰で生かされている喜びを叫びたい気分であった。舟見峠から先は、尾根道をずっと下る。3kmほど下ると那智高原、そして更に1kmあまりで、那智山青岸渡寺・那智大社。やっとの思いで到達したのである。達成感が疲労感を追い越し、清々しい気分だ。無性に手を合わせたくなった。まずは、那智大社の拝殿へ、目をつぶり手を合わすと、私の心は「ここまで、無事来させていただいてありがとうございました。」と感謝していた。今まで、味わったことのない心地よさである。また、いつも、神社ではお願い事ばかりしていたことにも気付いた。それと同時に、自分の非力さに気付かされていた。自分の悩みなんか何とちっぽけなものかと思えるのである。「こんなに頑張っているのにわかってくれない。」とか「俺が・・・俺が・・・」などと思い上がったことをよく考えていたと・・・感謝することを忘れていただけである。それが理解できると、身体の奥底からやる気がみなぎってきた。大きなことはできなくても、一歩一歩、目の前のことに真剣に取り組もう。過ぎ去ったことはくよくよしない、先のことも思い悩まない。今、この時を大事に。何度か聞かされたことがあるセリフだ。今、初めて、自分の身体の中から湧き上がるような思いとして理解できた。身体でわかると何と簡単なことか。言葉として理解できても、なかなか身体や頭がついていかないことが多い。その時、私は私にかけた呪いの桎梏から解き放たれたのである。

人間は悩みの中にいると、どんどんその渦の中に引きこまれてしまう。逃げ出せなくなってしまう。最近、「いじめ」が原因で自殺する若者が多い。例えば、クラスの中でいじめられている場合など、決して、その人達と無理に付き合う必要もないのだから、逃げ出すのも戦術である。学校を休むことなんて長い人生の中でなんでもないことだと思うし、一歩距離をおくことで、その人達しか見えなかった自分の目の前に、その人達の後ろや周りにいろんな人がいることに気付く場合だってある。お父さんやお母さんがいる。将来あなたと結ばれるはずの運命の人がいる。そして、将来のあなたの子供たちがいる。そして、明るい未来がある・・・なんかワクワクしてくる。学校を休んでも、決して家に閉じこもって考えないで外に出てみる。「熊野古道」なんか最高である。中でも「雲取越え」なんかは最高である。厳しい道を歩くことは大変である。しかし、熊野の大自然の中に身をおけば、二〜三人の人に振り回されている自分がバカらしくなって笑ってしまうかもしれない。地球上の生き物の中で、たかが二〜三人の人間がどうであっても、何億という生き物が「がんばれ!」と励ましてくれているように感じるかもしれない。そう、木々や草花、鳥や動物、そして、時々、道で出会うよく似た波長を持った人々。不思議なことではない。「熊野」に足を踏み入れるだけで、徐々に変わってくる。身体と心に着いた垢が、いつの間にか洗い流されていくような錯覚を覚える。どう感じるかは、五感が開放されていることが条件で、その人その人によって違うかもしれない。しかし、五感さえ開放すれば、熊野の地はきっとあなたの心を占拠しているドロドロとした垢を洗い流してくれる。

人間には、その人に必要な悩みや苦労を与えられるものである。どうして自分だけ・・・と考えがちだけど、本当は、みんな人間なんて弱いものである。神様は、中でも強くなってほしいと期待をして自分にだけ与えた試練かもしれない・・・熊野古道を歩いているときに、激しい雨が降ってきたり、足に豆ができたり、飲み物がなくなったり・・・すべて与えられたものと受け止めて、ひたすら歩くことができたら、歩き終わったあとで、必ず何か感じるものである。そして、少し前までの悩みが消えているか、小さくなっていることに気付く。熊野権現がきっと心の垢を洗い流してくれたのである。

午前中、熊野川沿いに車で走ってきた道を、今度は戻って行く。
来るとき、彼は、考え事ばかりしていてあまり景色を見てなかったので、今度はじっくり見てもらおうと思った。が、10分もしないうちに、いびきが聞こえてきた。相当お疲れのようである。それと、私に気を許したのであろう。ここは少しの間、そぉ〜っとしておいてあげよう。私は、ひと時、川沿いの大好きなドライブコースを一人で楽しむことにした。

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